
気づけば早いものでもう7月。今週末は七夕だ。正月とクリスマス以外のイベントはすっかり縁遠くなってしまって、気づかないうちに通り過ぎてる感じだが、利用している駅の構内に大きな笹がたてられていたりして、なんとなくホンワカした気持になる。笹の下に設けられたテーブルでは、通勤途中のOLやサラリーマンがせっせと短冊に願い事を書いている。短冊に書くくらいで願いが叶うなら、誰も苦労はしないことは重々承知だが、それでも夢をみたくて、空のない地下鉄構内の笹に願いをかけるのだ。夢や目標を文字にし、自分で再認識しつつ明日への活力にするのだ。
会社帰りに友人と何気なく短冊を見ていたら、これが結構面白い。ほぼ匿名のようなものだから、みんな好き勝手なことを書いている。しかし願い事と言えば大まかに分類していつの時代も、お金・恋愛・仕事(学業)・健康などが主だが、『冬のボーナスが出ますように』とか『温泉にいきたい』とか『部署異動』とか、とても慎ましやかな願いが多いようだ。一昔前の『億万長者』だの『世界一周』だの『社長になりたい』というようなバブリーさがないのが何ともいじらしい。
そんな中、とても興味深い短冊を発見した。

『ゴキブリを素手で触れますように』
なぜなのだ?遭遇しませんように、とか、ビビらず退治できますように、ではなく、なぜ“素手”でなくではいけないのだ??
そうか。思うに、この短冊を書いたアキラ君(仮名)が、今年のGW、サークル旅行で沖縄に行った時に、密かに思いを寄せるひとみちゃん(仮名)といいカンジで一緒にいるときに、ゴキブリが出てしまったのだな。しかしアキラ君はビビってしまって、怯えるひとみちゃんの前でなすすべもなくうろたえるばかりで大幅にポイントを下げてしまったのだ。そこへ恋のライバルケンジ君(仮名)が現れて、丸めた新聞紙で一撃必殺!みごとに退治したわけだ。ひとみちゃんは『ケンジクン、すごぉぉーい!』ケンジ君は『たいしたことないさ』なんて白い歯をキラリとさせたもんだから、アキラ君としては何としてでも次の伊豆の夏合宿でポイントを挽回しなくてはいけないのだ。新聞ケンジに勝つためには素手で立ち向かうしかないと意を決したわけだ。そうか、アキラ。そこまで思いつめているのなら、私の今年の短冊はアキラ君へ捧ても構わない。
しかしアキラよ。ゴキブリをビビらず退治できる男は逞しく頼り甲斐があるが、素手で触る男は気持悪いぞ。できればその事実に気づいてくれることを願うばかりだ。